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Ishii Hendrix 公式日記

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こわいものの正体




 小泉政権はこわいなー、となんとなく前から思っていた。政権がやってきたことに評価すべきことはあると思うし、これまでの政権で、特に末期に覚えた「○○首相、すぐやめてっ!ジャスナウっ!」という感じはない。けれど、首相があれだけ靖国参拝にこだわったり、次期首相候補と言われるあの方が、北朝鮮拉致問題で強硬な発言を繰り返したり、そういうのを見ると、なんとなく、あくまでなんとなく「こわいなー」と思っていた。
 
 今回の衆院選挙で、その「こわいもの」の正体が見えたような気がした。

 一つは政治スタイル。とにかく敵、スケープゴートをつくって、その敵と戦う姿を見せることで支持を得るやり方。「抵抗勢力」「郵政改革法案反対派」をスケープゴートにして、「ぶっつぶす」って言ってるビデオをテレビで繰り返し流してるのを見て、「小泉劇場」とか言って笑っているうちはまだいい。
 しかし、この敵をつくっていくやり方はこわい。故なく外国人や他民族をスケープゴートにして、とんでもないファシスト国家をつくって、とんでもない戦争を始めてしまった、そんな国家があったのは、歴史的には、思ってるほど前のことじゃない。小泉さんが、すぐにそんなことを始めるとはさすがに思わないけど、この政治スタイルが継承されれば、それに続く人がそういうことを始めないとは限らない。

 二つ目は小選挙区制度。連用性とか並立制とか難しいことは忘れたけど、郵政民営化みたいにやはり熱に浮かされたようにして(郵政民営化よりすごいのは、政権をいくつもぶっつぶして)、やっと作った選挙制度なのだが、その極端さがすごいというのがわかったのが今回の選挙だったと思う。毎日新聞の記事によると、
 
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 今回の衆院選小選挙区の有効投票総数のうち自民党候補の得票の占め
る比率は47.8%、民主党候補は36.4%であることが毎日新聞の集計で
12日、分かった。自民党は定数300の小選挙区で7割以上にあたる219
議席を獲得、民主党は4分の1以下の52議席にとどまっており、得票率以
上に議席数に差がつく小選挙区制度の傾向をまざまざと映し出した形だ。
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 だそうで、小選挙区だけだけど、10%あまりの得票差が4倍の議席数の差を生み出すのはやっぱり変だ。国民の「郵政民営化支持」が、実態以上に反映されたみたいです。さすがに、「外国人を排斥しろ」とか「悪の枢軸国を倒せ」なんて政策が、今回の郵政民営化的に国民の支持を得るわけはない(外国人を、すでに静かに排斥しているという感じがないかもしれませんが、それはそれとして)。しかし郵政民営化だって、「行政改革」とか「官から民へ」という大義名分があるから支持を得たわけで、「民主党・社民党の支持基盤の労働組合を骨抜きにしろ」とか「地方の貯金や郵便のサービス低下を国は知らんぷりします」とか、「小泉個人の権力拡大のためにやります」なんてことでは、こんなに広い支持は得られないと思う(小泉さんが、郵政民営化を進めた実際の理由とか動機がそうだったと決めつけてるワケではありません。念のため)。大義名分で「外国人排斥」を包むうまいやり方を見つける人が将来出てくるかもしれない。
 
 三つ目は、この選挙でも誰も日本の未来像を、少なくともワタシにわかるようには示さなかったことだ。これでは行き先のわからないバスに乗っているようなものだ。バスに乗るなら、東京へ行くか、大阪へ行くか、渋谷なのか新宿なのか、難波なのか梅田なのか知りたいのだが、なんか「北へ向かいます」くらいしか教えてもらってない感じ。高速バスかなんかで降りられないとすれば、ますますこわい。日本の社会が将来どうあるべきか、なんて一言で伝えるのは難しいし、昔みたいになんとなく「アメリカみたいに豊かに」なんてこともできないのはわかるけど、もうちょっと努力してほしい。「郵政民営化」「日本をあきらめない(誰もあきらめてないって)」「護憲」「サラリーマン増税反対」「とにかく反小泉」では、どこへ行こうとしているのかサッパリわからない。。。
 
 ついでに言うと、「刺客」を送り込んだメンタリティもこわい。兵法の基本は敵を知ることで、その上で敵が困ることを徹底的にやるのが、戦いなのでしょう。しかし、人間だから、敵を知ると相手をおもんぱかる気持ちも生まれがち。しかも党内の敵(ライバル)は、ある意味で味方。だから今までの自民党は、党内の敵が困るであろう要素は、せいぜい脅しの材料として使うくらいで、本当に追いつめたりしなかったのだろう。それが小泉さんは、郵政民営化法案の反対派を躊躇なく追いつめたわけです。これもコワイと思った。
 もっと言えば、造反議員を困らせるには、党の公認をとりあげること、対立候補を自民党から出すこと、これが一番こたえるんだろう。造反議員を除いても、与党で過半数とっていたから、その数だけきちんと確保すれば、過半数はとれる。「票が割れるから」と反対した自民党の人もいたと思うが、小泉さんは、その選挙区では「造反議員に議席をやるくらいなら、民主党にとらせた方がよい」とか思っていたのではないか。「刺客」というが、「捨て駒」覚悟だったわけではないか。結果は「刺客」と言われた人たちが、たくさん通ったから、忘れかけてたけど。こういうことを実行しちゃう人はオソロソイ。。。
 
 前から感じていた、このこわさ。今年7月の東京都議選で民主党が躍進した時、このこわさをみんながなんとなく共有してるのではないかと思っていたのだが、それは思い過ごしだったみたい。
 
 評論家的にいろいろ書いたけど、評論家ならまだいいんです。困ったことに、こういう社会を担っていかないといけないのが、われわれ有権者なのであって、まったく「なんてこったい」と思いながら、今日は寝ます。

写真は、行きつけの喫茶店での昼食。いつも行くので、大盛りにしてくれました(笑)。
(いしい)
by Ishii-Hendrix | 2005-09-16 04:42 | ニュースから

石井ヘンドリックスメンバーによる公式の日記です。


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